この記事でわかること
- 「押し買い(訪問購入)」と呼ばれるトラブルの実態とデータ
- 悪質業者が使う3つの手口
- 訪問購入を規制する法律の内容
- 今日からできる5つの対策
- トラブルが起きたときの相談先
こんな不安はありませんか
- 「一人暮らしの親に、不用品買取の電話が来ているらしい」
- 「実家の片付けで業者を探しているが、どう選べば安全かわからない」
- 「親が知らない業者に貴金属を買い取られたかもしれない」
- 「業者が来て断れなかったと親から連絡があった」
- 「クーリング・オフはできると聞いたが、具体的にどうすればいいかわからない」
まず結論
「不用品を引き取る」という電話や訪問をきっかけに、貴金属などを著しく低い価格で買い取られるトラブルを「訪問購入(押し買い)」と呼びます。
国民生活センターの訪問購入の相談件数は、2023年度8,623件、2024年度7,909件、2025年度7,523件です。2026年5月31日までの登録分で、経由相談を含みません。相談件数は被害人数や犯罪件数と同じではありません。
手口にはパターンがあり、訪問購入は特定商取引法の規制対象でもあります。知っているかどうかで、対応できる幅が変わります。
実際に寄せられている相談の声
国民生活センターには、こうした相談が寄せられています。
「不用品を引き取る」と電話があり、洋服を出そうと来訪を承諾した。来た担当者に「貴金属はあるか」「宝石はあるか」としつこく聞かれ、貴金属を強引に買い取られてしまった。
高齢の母が在宅中に、古本を買い取ると電話があり依頼したら、玄関先に置いていた貴金属を安価で買い取られた。今後も同様の勧誘がないか不安だ。
高齢の母の高額なアクセサリーを、家に来た買取業者が持ち去ったようだ。書面は受け取っておらず、お金も受け取っていない。
共通しているのは、「別の品物を口実に家に入り込み、本命の貴金属を持ち去る」という手口です。そして被害者の多くが高齢者であることも共通しています。
(出典:国民生活センター公表資料)
データが示す訪問購入トラブルの現状
国民生活センターのPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録された訪問購入の相談件数を見ると、以下のように推移しています。
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2023年度 | 8,623件 |
| 2024年度 | 7,909件 |
| 2025年度 | 7,523件 |
上の表は2026年5月31日までの登録分です。集計時点によって件数は変わるため、最新の数値は国民生活センターの公表ページで確認してください。
年齢にかかわらず、その場で契約を決めず、品物や契約内容を家族や相談窓口と確認することが大切です。
この統計は訪問購入に関する相談を集計したもので、空き家トラブル全体の件数ではありません。
高齢者を取り巻く消費者トラブルは、減少しているどころか、深刻化している状況です。
(出典:国民生活センター公表資料、消費者白書)
悪質業者の3つの手口
パターンを知っておくと、対処しやすくなります。
手口①:テレアポの罠「何でも買います」
電話口では「古着」「古本」「不用品」など、処分に困っているものを引き取るという話で連絡してきます。この段階では穏やかで丁寧な口調です。
しかし家に入ることが目的であり、古着や古本は口実に過ぎません。
家に上がった後、話題は変わります。「金の指輪はありませんか」「亡くなったお父様の形見の時計は?」当初の約束とは別の品物を要求し始めます。
手口②:居座り戦術「帰らない」圧力
目当ての品物が出てこないと、業者はなかなか帰ろうとしません。
「せっかく来たのだから」「交通費がかかっている」などと言いながら、長時間居続けます。一人暮らしの高齢者にとって、見知らぬ人が家にいること自体が大きなプレッシャーになります。
根負けして差し出した貴金属を、市場価格の10分の1以下で持ち去るケースも報告されています。
手口③:感情への付け込み「今売らないと損」
「金の相場が下がる前に売った方がいい」「このまま放置すると処分代がかかる」こうした言葉で不安を引き出し、即断を迫ります。
冷静な判断ができないまま、思い出の品を手放してしまうケースがあります。クーリング・オフに応じない業者も少なくありません。
訪問購入は法律の規制対象です
訪問購入は、特定商取引法で規制されている取引類型です。2013年の法改正で追加されました。
業者が守らなければならないこと:
- 勧誘に先立ち、業者名・買取の種類・品目を明示すること
- 契約する意思がないと伝えた相手への、勧誘の継続・再勧誘はできないこと
- 契約書面を交付すること
- クーリング・オフ期間(8日間)を認めること
- クーリング・オフ期間中は品物を引き渡さなくてよいことを伝えること
規制対象の訪問購入では、次のような行為が禁止されています。物品や取引の事情によって適用除外があるため、個別の取引は消費生活センターに確認してください。
- 電話で「古着を買い取る」と言いながら、実際には貴金属を要求する
- 断っているのに帰らない、何度も電話してくる
- 契約書を渡さない、またはクーリング・オフを認めない
- クーリング・オフ期間内に品物を受け取る際、引渡しを拒める権利を伝えないこと
品物を引き渡したことだけで、直ちに違法になるわけではありません。規制対象の取引では、法定書面を受け取った日から8日以内は引渡しを拒めます。契約解除の通知方法や適用条件は、消費者庁の案内を確認してください。
(出典:特定商取引法の規定)
家族を守るための5つの対策
対策1:知らない業者を家に入れない
最もシンプルで、最も効果的な対策です。
電話があっても「結構です」で切る。インターホンが鳴っても、心当たりがなければドア越しに断る。「家に入れなければ、被害は起きない」という前提を親と共有しておくことが基本です。
「知らない人が来ても、ドアを開けなくていいよ」と伝えておくだけで、状況は変わります。
対策2:一人で対応しない
もし業者が来てしまった場合でも、一人で対応させないことが重要です。
「息子(娘)に相談してからにします」と言えるよう、親に伝えておきます。家族が同席できないなら「家族がいるときにもう一度来てください」と伝えるだけで構いません。
「家族が介入する」とわかると、その場で引き下がる業者は多いとされています。
対策3:その場で物を渡さない・現金を受け取らない
査定の場で売却を急いで決めず、契約書と品物の明細を確認しましょう。規制対象の取引では、代金の受取りや品物の引渡し後でも、法定の条件を満たせばクーリング・オフができます。
「今日は見せるだけです」「持って帰るのはお断りします」この一言を言えるよう、親に伝えておきます。
対策4:相場を知っておく
金の買取価格は公開情報です。田中貴金属工業などのサイトで、今日の金価格は誰でも確認できます。
業者が提示する金額と比較できるようにしておくと、不当な価格かどうかを判断しやすくなります。
対策5:困ったら「188」に電話する
消費者ホットライン「188(いやや!)」は、全国どこからでもかけられる消費生活センターへの相談窓口です。
「契約してしまったが取り消せるか」「業者が帰ってくれない」こうした緊急時に、専門の相談員が対応してくれます。
親の電話の近くに「困ったら188」と書いたメモを貼っておくだけでも、緊急時の行動が変わります。
「実家の片付け」がきっかけになるケースも
「業者から電話が来ることはないから大丈夫」と思っても、もう一つ注意すべきケースがあります。
それは、家族が「実家の片付け」のために業者を探す場面です。
親の施設入居や相続による家じまい。大量の家財道具を前に、インターネットで検索して、上位に表示された業者に連絡する。この流れ自体は自然です。
ただし、「不用品の回収」を入口に、買取価値のある品物を低価格で持ち去る業者がいます。遺品の中に紛れていた貴金属や骨董品を、家族が把握する前に処分されてしまうケースも報告されています。
家の片付けは、資産の仕分けでもあります。「捨てる」「売る」「残す」の判断は、焦って行う必要はありません。
相談先がバラバラになること自体が問題を大きくする
訪問購入トラブルの背景には、「どこに相談すればいいかわからない」という状況があります。
親の介護のことは地域包括支援センター。相続のことは弁護士。家の片付けは遺品整理業者。不動産の売却は不動産会社。そして買取トラブルは消費生活センター。
問題ごとに窓口が違う。どこに相談すればいいかを調べること自体に時間がかかる。その間に悪質業者が入り込む余地が生まれる。
相談先がバラバラな状態が、問題を大きくしやすくします。
まとめ
訪問購入トラブルについて、整理すると以下になります。
- 訪問購入の相談統計は、対象年度・集計時点を確認して読む。相談件数と被害人数は区別する
- 手口は「テレアポで入り込み、居座り、感情に付け込む」の3パターン
- 訪問購入は特定商取引法の規制対象。クーリング・オフは8日間認められている
- 対策は「家に入れない・一人で対応しない・その場で渡さない・相場を知る・困ったら188」の5つ
- 実家の片付けで業者を探す場面にも同じリスクがある
まちさぽでできること
まちさぽは消費者被害の専門相談機関ではありません。訪問購入トラブルが起きた場合は、消費者ホットライン(188)や消費生活センターに相談することをおすすめします。
ただし、以下のような整理はサポートできます。
- 実家の片付けをどの業者に依頼すべきか整理する
- 業者選びの基準と確認すべき点を一緒に整理する
- 施設入居・実家の片付け・不動産売却・相続が同時に動き始めた場合に、全体の優先順位を整理する
- 「どこに相談すればいいかわからない」という状況を整理し、適切な窓口へつなぐ
「親に知らない業者から電話が来ているようで心配」「実家の片付けをこれから進めるが不安がある」という段階でも相談できます。
注意点
状況整理から、まずご相談ください
初回相談で、現在の状況・必要な専門家・優先順位を一緒に整理します。LINEなら3分のチェックリストから始められます。
まちさぽへの相談について
介護・相続・施設探し・家じまい・地域のトラブルなど、親の老後に関する悩みを一緒に整理します。
「何から手をつければいいかわからない」という段階でも相談できます。
親の老後を、ひとりで抱え込まないために。
まずは現在の状況を整理するところから始めましょう。
参考資料・制度の確認先
更新日:2026年9月16日
制度の適用条件や手続きは、リンク先の最新情報と各窓口で確認してください。