この記事でわかること
- 成年後見制度の基本的な仕組み
- 「任意後見」と「法定後見」の違いと使い分け
- それぞれのメリット・デメリット
- 2026年時点での制度改正の動向
- 次のステップとして何をすべきか
こんな不安はありませんか
- 「親が認知症になったら、銀行口座や施設の契約はどうなるのか」
- 「後見人は誰がなるのか、自分で選べるのか」
- 「任意後見と法定後見の違いがわからない」
- 「すでに認知症の兆候がある親に、何かできることはあるか」
- 「成年後見制度を使いたいが、何から始めればいいか」
まず結論
成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などで判断能力が低下した方を、法律の力で支援する仕組みです。
この制度には大きく2種類あります。
- 任意後見:本人の判断能力があるうちに、自分で後見人を選んでおく制度
- 法定後見:判断能力が低下した後、家庭裁判所が後見人を選ぶ制度
どちらを選ぶかは、「今、親の判断能力がどの程度あるか」によって変わります。
成年後見制度が必要になる場面
以下のような場面で、成年後見制度が関係してきます。
- 親が認知症になり、銀行でお金を引き出せなくなった
- 悪質な訪問販売で、高額な契約を結ばされてしまった
- 老人ホームに入りたいのに、契約書にサインできない
こうした場面で、本人の代わりに契約や財産管理をする「後見人」をつける仕組みが成年後見制度です。
任意後見と法定後見の比較
| 比較項目 | 任意後見 | 法定後見 |
|---|---|---|
| いつ使うか | 判断能力があるうちに準備する | 判断能力が低下した後に申し立てる |
| 後見人を選ぶのは | 本人 | 家庭裁判所 |
| 始め方 | 公証役場で契約書を作成する | 家庭裁判所に申し立てる |
| 柔軟性 | 内容をカスタマイズできる | 制度の枠組みに沿う |
| 取消権 | 原則なし | あり(悪質商法などへの対応可能) |
| 報酬 | 契約による | 家庭裁判所が決定 |
任意後見制度
一言でいうと
「判断能力があるうちに、将来の自分を守る契約を結んでおく制度」です。
認知症になったときに備えて、「この人に財産管理をお願いしたい」と自分の意思で決めておきます。
始め方(3つのステップ)
ステップ1:信頼できる人を選ぶ
家族・友人・司法書士・弁護士など、誰でも後見人候補になれます。
ステップ2:公証役場で契約書を作る
任意後見契約は、公正証書で作成することが法律で義務づけられています。「お願いしたい内容」を公証役場で正式な書類にします。
ステップ3:判断力が低下したら、家庭裁判所に申し立てる
実際に認知症などになったとき、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選びます。この監督人が選ばれた時点で、後見がスタートします。
任意後見の3つのタイプ
任意後見には、使い方によって3つのパターンがあります。
将来型(もっとも一般的)
契約だけ先に結んでおき、将来必要になったときに発動する。判断能力がしっかりしている段階で準備しておく、標準的な使い方です。
移行型
元気なうちは「財産管理の委任契約」として財産の管理をお願いし、判断能力が低下したら「任意後見」に移行する。継続的なサポートが必要な場合に向いています。
即効型
軽度の認知症がすでに進んでいるが、契約能力はまだ残っている場合に活用する。判断能力があるかどうかの確認が重要です。
メリット
- 後見人を自分の意思で選べる(最大のメリット)
- 支援してほしい内容をカスタマイズできる
- 「この人には任せたくない」という不安を解消できる
デメリット
- 後見人に取消権がない(悪質商法に対応しにくい)
- 実際に判断力が低下するまでは効力が発生しない
- 重度の認知症になってからでは契約できない
法定後見制度
一言でいうと
「判断能力が低下した後に、家庭裁判所が後見人を選ぶ制度」です。
すでに認知症などで判断能力が低下している場合、家族などが家庭裁判所に申し立て、裁判所が後見人を選任します。
法定後見の3つの類型
本人の判断能力の程度によって、3つに分かれます。
| 類型 | 対象 | 後見人の権限 |
|---|---|---|
| 後見 | 判断能力がほとんどない方 | 財産管理・契約全般の代理と取消 |
| 保佐 | 判断能力が著しく不十分な方 | 重要な行為の同意と取消 |
| 補助 | 判断能力が不十分な方 | 特定の行為の同意と取消 |
始め方(3つのステップ)
ステップ1:家庭裁判所に申し立てる
本人・配偶者・4親等内の親族・市町村長などが申立てできます。
ステップ2:裁判所が調査・審理する
本人の判断能力を医師が鑑定し、裁判所が類型を決定します。
ステップ3:後見人等が選任される
裁判所が後見人を選びます。候補者を立てることはできますが、希望通りになるとは限りません。弁護士や司法書士など専門家が選ばれることも多いです。
メリット
- 後見人に取消権がある(悪質商法などから守れる)
- すでに判断能力が低下している方でも利用できる
- 裁判所が後見人を監督するため、制度上の安心感がある
デメリット
- 後見人を自分で選べない
- 一度始まると、原則として本人が亡くなるまで続く(改正の動向については後述)
- 専門家が後見人になると月々の報酬が継続的に発生する
結局、どちらを選べばいいのか
判断の起点は「今、親の判断能力があるかどうか」です。
親の判断能力がまだしっかりしている場合
任意後見を検討するタイミングです。親自身が「誰に・何を任せるか」を決められる段階で準備しておくことで、選択肢が広がります。家族信託と組み合わせると、より柔軟な対策が可能です。
すでに認知症の症状がある場合
診断名だけで選択肢が決まるわけではありません。任意後見契約の内容を理解して判断できるかを確認し、難しい場合には法定後見などの利用を検討します。すでに任意後見契約がある場合は、監督人選任の手続きも確認してください。
どちらに当てはまるかわからない場合
「うちの親はどちらに当てはまるか」という判断は、専門家への確認が必要です。司法書士・行政書士・地域包括支援センターへの相談が、判断の近道になります。
2026年時点での制度改正の動向
成年後見制度は、制度開始から約25年で初めての大きな見直しが進んでいます。
成年後見・遺言制度を見直す改正法は、2026年6月17日に成立し、6月24日に公布されました。法律の成立と、新しい制度を利用できる施行時期は別です。
主な改正の方向性:
- 「後見・保佐・補助」の3類型を「補助」に一本化し、本人のニーズに応じて必要な支援だけを選べるようにする
- 終身制の見直し。必要がなくなった場合に終了できる仕組みへ
- 後見人の交代をしやすくする
- 業務内容に応じた報酬体系の明確化
改正によって、「使いづらい制度」から「必要なときに使える柔軟な制度」へと変わることが期待されています。
本記事の後見・保佐・補助の説明と新制度の違いは、法務省の公式案内で施行日・経過措置と併せて確認してください。利用中の手続きが自動的に終了するという意味ではありません。
今の段階でできること
制度改正の動向にかかわらず、今の段階でできることがあります。
- 親が元気なうちに「もしものとき」の話をしておく
- 任意後見や家族信託の選択肢を、専門家に相談して整理しておく
- 地域の相談窓口や司法書士と「つながっておく」
制度を使うかどうかに関わらず、「準備したかどうか」は、いざというときの家族の負担に直結します。
まちさぽでできること
まちさぽは、成年後見制度の申し立てや法的手続きを行う機関ではありません。
ただし、以下のような整理をサポートできます。
- 任意後見・法定後見・家族信託のうち、今の親の状態にどれが合っているかを整理する
- 必要な専門家(司法書士・行政書士・弁護士)への橋渡し
- 後見・相続・施設入居・実家の整理など、複数の課題が重なっている場合の優先順位の整理
- 専門家相談後の進行管理サポート
「制度はわかったが、うちの場合はどうすればいいかわからない」という段階でも相談できます。
注意点
2026年の制度改正については、本記事執筆時点(2026年4月)の情報を基にしています。改正法の成立・施行状況については、法務省または専門家の最新情報をご確認ください。
まとめ
成年後見制度の基本は以下です。
- 任意後見:判断能力があるうちに準備する。後見人を自分で選べる
- 法定後見:判断能力が低下した後に裁判所が動く。後見人の選定は裁判所
- どちらを選ぶかは「今、判断能力があるかどうか」が起点
- 制度改正が進んでおり、今後使いやすくなる見込みだが、今の段階での準備が重要
状況整理から、まずご相談ください
初回相談で、現在の状況・必要な専門家・優先順位を一緒に整理します。LINEなら3分のチェックリストから始められます。
まちさぽへの相談について
成年後見・家族信託・相続・施設入居など、複数の課題が重なってきたとき、まちさぽは状況の整理をサポートします。
「何から手をつければいいかわからない」という段階でも相談できます。
親の老後を、ひとりで抱え込まないために。
まずは現在の状況を整理するところから始めましょう。
参考資料・制度の確認先
更新日:2026年9月16日
制度の適用条件や手続きは、リンク先の最新情報と各窓口で確認してください。